不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
そんな彼、藤嶋灯はこのフジロイヤルのGM──つまり総支配人を勤めており、ホテル内の各部門を取りまとめているだけでなく、組織のトップとして絶大な権力をふるっていた。
それもそのはず、灯はフジロイヤルを経営するフジリゾートの取締役社長の子息で、祖父は同社の会長を務めているのだ。
つまり、灯は将来的にフジリゾートを背負って立つ男。
だけど、この嫌味な男が未来の日本の観光事業を支えていくことになるなんて、妻である私はあまり想像したくないことだった。
「仲睦まじい新婚夫婦って……そんなふうに見えるわけないでしょ。バカバカしい」
強く睨めば、灯はそっと目を細めてから羽根のように長いまつ毛を伏せた。
ふ、ふん。哀愁を漂わせたって、私は反省なんてしないんだから。
そもそも、いつも先に突っかかってくるのは灯のほうだし、そのたびに振り回されるこちらの身にもなってほしい。
「バカバカしい、か。だけど残念ながら牡丹と俺が夫婦になった事実は覆らないし、牡丹はこれからも、俺のそばを離れることはできない。それはよくわかっているだろう?」
頬に冷たい手が触れ、不覚にも一週間前と同じように鼓動が跳ねた。
ああ、もう本当に最悪だ。
思い返せばこの地獄みたいな状況の始まりは、今から十数年前の出来事に遡る。
あれはまだ私と灯が自分たちの未来も知らない、幼い子供だったころの話だ──。