不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
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「ともりくん、今日はぼたんとお店やさんごっこして遊ぼう!」
都内の某高級住宅街に建つ瀟洒(しょうしゃ)な邸宅。
そこが藤嶋灯の生家で、フジリゾート取締役社長の自宅だった。
幼い頃の私はふたつ年上の灯と、彼の家の庭でシートを広げて、よくおままごとをして遊んでいた。
というのも私の父は灯の父親と旧知の仲で、お互いに子供が生まれてからは家族ぐるみの付き合いをするようになったのだ。
当時、父は【山城商事】という食品加工会社を経営していたこともあり、我が家も藤嶋家ほどではないにせよそこそこ裕福な家庭で、自宅も灯の家から数百メートルほど離れた場所にあった。
「はい、ともりくん。ぼたんが、あーんってしてあげるね」
「ハハッ、牡丹はほんとに灯くんによく懐いてるなぁ」
「いやいや、灯だって牡丹ちゃんがうちに来る日は、いつもよりも一時間以上早く起きるんだよ」
「とうさん! それは言わないって約束だろ!」
まだ両家が対等の関係を保っていたあの頃は、父同士はもちろん、私と灯の間にも、一切の確執や壁はなかった。
私達の関係が大きく変わったのは私が高校一年生、灯が高校三年生のときだ。
父が経営する会社の業績が悪化し、山城商事はこのままでは近いうちに倒産するだろうという話になった。
父は日に日にやつれていき、母はイライラしていることが増え、家庭内には常に不穏な空気が漂っていた。