不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「先生は先程珍しい症例だと仰りましたが、その前置血管というのはそれほど稀なものなんでしょうか?」
代わりに尋ねたのは灯だ。
灯の質問に難しい顔をした志村先生は、少し考える様子を見せてからそばにいた看護師さんに声をかけた。
「ごめん、もう一回、森先生呼んできてくれる?」
森先生……? そういえば、さっき二度目の内診台での検査のときに、カーテンの向こうで志村先生が呼んだのも同じ名前だった気がする。
さっきは初めて見るモニターの映像にドキドキしていて、気にしている余裕がなかったけれど……。
「すみません、実は偶然、三年前に前置血管のお産を担当したものがいたので、先ほど一緒に確認してもらったんです」
つまりそれが今、志村先生が呼んだ森先生というわけだ。
珍しい症例なら過去に担当したことのある先生の意見を仰ぐのが正解だと志村先生が判断してのことだろう。
「すみません、お待たせしました!」
と、すぐに診察室にやってきたのは灯と同じ年くらいの男の先生だった。
「はじめまして、産婦人科医の森と申します」
だけどその先生の顔を見た瞬間、私と灯は反射的に凍りついた。
「森……?」
「え? あ……藤嶋っ⁉」
唖然としながらも尋ねたのは灯だ。
そして灯に名前を呼ばれて目を瞬かせたのは間違いなく──私が高校生時代に憧れていた、〝森先輩〟その人だった。