不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「何を言ってるんだ、俺達の仲じゃないか! 困ったときはお互い様だよ。もう大丈夫だから」
しかし、いよいよ倒産まで待ったなし……というところで、事情を知った藤嶋家がうちに救いの手を差し伸べてくれたのだ。
灯の父が経営しているフジリゾートが山城商事を買収、子会社化することで、会社と従業員たちを守ってくれた。
「本当に申し訳ない、ありがとう、ありがとう……っ。この恩は一生忘れない!」
「だから、そんなふうに何度も頭を下げないでくれよ。牡丹ちゃんだって灯と同じ高校に通い始めたばかりなんだ。状況を考えたら、俺がお前を助けるのは当然のことだよ」
灯の父の言葉に、私の父は涙を流しながら言葉にならない嗚咽をもらした。
母も、何度も何度も頭を下げて感謝の言葉を述べていた。
「まぁ、強いて言うなら牡丹ちゃんが将来、灯に嫁いで本当にうちの娘になってくれたら嬉しいんだが。って、こんなことを言ったら、また灯にチクリと言われてしまうけどな」
それは父と母が抱いている罪悪感と肩の荷を少しでも降ろさせようという、灯の父の気遣いから出た軽口だった。
もちろん灯と正式に婚約なんて交わしていなかったし、当時の私も今の私も、灯の父が言った言葉はその場の空気を和ませるためのものであったと認識していた。
「藤嶋には、一生をかけても返せないくらいの恩がある」
けれど倒産事件以降、父はことあるごとにそう言って灯の父を崇拝し、一定の距離を置くようになった。