不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「今、ご主人から前置血管の症例数についての質問を受けて……」
「ああ、なるほど。そうですね、前置血管の妊婦さんのお産は、うちの病院では過去二例だけです。そのうちの一例を、僕が三年前に担当しました」
「過去、二例だけ……?」
まず、驚いたのはそこだ。
今、私が受診しているのはこの辺りでは一番歴史も古く、規模も大きい総合病院の産婦人科なのに……。
その産婦人科で過去二例しか症例がないというだけで、前置血管というのがどれだけ稀なものかというのがわかってしまう。
「ハッキリと統計が出ているわけではないですが、妊婦さんの約五千人にひとりと言われていて、極めて珍しい症状であると言えます」
「五千人にひとりって……」
続けられた言葉に今度は青ざめた。
今の森先輩の言い方だと、珍しさは多分前の病院で診断された前置胎盤の比ではないのだろう。
「志村先生が描いた図を見ていただいたとおり、通常分娩で赤ちゃんを産んでしまうと、出産時に子宮口付近を這っている血管を傷つけ、大量出血します。そうなると赤ちゃんだけでなく、お母さんの命にも危険が及びます」
大量出血の可能性がある、ではなく、出血すると断定的な言い方をされた。
それだけではなく、母子ともに命の危険があると……。私は思わず自分のお腹に手を当てて、震える息を吐いた。