不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「牡丹、あなたは将来、灯くんの隣に立っても恥ずかしくないような女性になりなさい」
そして母は私を常に灯の婚約者として教育するようになり、あろうことか私の交友関係にまで口を出し始めたのだ。
「牡丹、マチコちゃんのお母様から聞いたけど、あなた、あろうことか灯くんと同級生の森先輩とかいう男の子に片思いしてるらしいわね」
森先輩とは、実際に当時の私が憧れていた先輩のことだった。
「まさか、わざわざマチコちゃんのお母さんに聞きに行ったの!? 私が誰に恋していようが、お母さんには関係ないでしょ!」
つい逆上して反論した直後、パチン!という乾いた音と頬に鋭い痛みが走った。
「いい加減にしなさい! 何度言ったらわかるの? あなたは将来、灯くんの妻になるのよ。森先輩だかなんだか知らないけれど、あなたがその男の子に片思いしてるだなんて話が灯くんの耳に入ったら、どうなると思っているの!」
まるで頭を鈍器で殴られたかのような衝撃だった。
母は私の気持ちを優先しようなんてこれっぽっちも考えていないし、私を自分の娘ではなく灯の将来の妻としか見ていないんだと思った。
「……婚約の話なんて真に受けているのはお父さんとお母さんだけで、灯のお父さんもお母さんも灯自身も、本気で考えているわけないじゃない!」
実際、私は灯本人から婚約について言及されたことは一度もなかった。
子供の頃ほどではないにせよ、灯とは今でも会えば話をするし、テスト前には頼めば勉強だって教えてくれる。
壁ができてしまった両親たちよりも、よっぽど良好な関係が築けていると思っていた。
だから、私達の婚約話に執着しているのはうちの両親だけだと、このときの私は思っていたのだ。