不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「藤嶋さんは個室希望なので、こちらのお部屋になります」
案内されたのは六畳ほどの個室で、日当たりの良い部屋だった。
入院になった場合の希望を出すときに、灯が個室のほうが気兼ねなく過ごせるだろうからって理由で決めたこと、すっかり忘れてた……。
「それじゃあ、ご主人が来るまでの間、ここでお待ちください。何かあればいつでも声をかけてくださいね」
「はい、ありがとうございます」
そうして看護師さんが部屋から出ると、また辺りは静寂に包まれた。
と言っても、入院棟のフロアだけあって人の気配はするし、時々赤ちゃんの泣き声も聞こえてくるから寂しさは感じない。
「しばらくここで、ふたりっきりだね」
お腹の子に声をかけたら、自然と顔が綻んだ。
最近はグニュっとお腹の中で動いたり、胃を蹴られる感じがあったりと、胎動もだいぶハッキリ感じられるようになった。
あ……そうだ。灯に本を持ってきてほしいってこと、伝えなきゃ。
あと何か他に、必要なものってあるかなぁ。何度も来てもらうのは申し訳ないし、なるべく一度で済むようにまとめてメッセージを送らなきゃ。
と、お腹に手を当てたままベットの上に座り、ぼんやりとあれこれ考えいたら不意に部屋の扉がノックされた。
「藤嶋さん、今大丈夫ですか? 産婦人科医の森です」
産婦人科医の森……って、もしかして森先輩!?
「は、はい! 大丈夫です!」
慌てて返事をすれば、今日も白衣を身にまとった森先輩が扉を開けて入ってきた。
くっきりとした二重瞼と、甘いマスクは高校生の頃から変わっていない。
ふたりきりで会うのは初めてだから、反射的に緊張で身体が強張った。