不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
 


「〝ありがとう〟は、私の台詞だよ。灯、私をあの子のお母さんにしくれてありがとう。──愛してる」


 意地を張って、ずっと伝えられずにいた言葉がようやく言えた。

 あの日、あの公園で、もしも灯が『結婚なんてするつもりはない』と言って私の手を離していたら、私は今感じている幸せに出会えなかった。

 いつも、どんなときでも私を離さずにいてくれた灯のおかげで、この出産も最後まで乗り切ることができたと思う。


「バカ。……待ちくたびれたよ」


 また、灯の瞳が僅かに潤む。

 彼が見せた幸せそうな笑顔を見たら、また胸には愛しさがあふれた。


 * * *


「ねぇ、帝王切開した翌日には歩かなきゃいけないって、なかなかハードだよね……」


 無事に出産を終え、その日は丸一日安静にしていた私だけど、翌日には看護師さんに言われるがまま点滴スタンドを使って歩き出した。

 私は帝王切開だったから、結局陣痛の痛みを経験することはなく、手術前はそれがちょっと寂しいなぁなんて思っていたのだけれど結果として考えが甘かった。

 確かに陣痛の痛みは知らずに終わったけれど、術後の後陣痛は今まで経験したことのない激痛だった。

 それだけじゃなく、お腹を切られているからちょっと身体を動かすだけでも辛くて、歩く姿は完全に腰の曲がったおばあちゃんだ。

 でも、歩いてNICUに行かないと愛しい我が子に会えないというのが現状なので、気持ちを奮い立たせた私は顔を上げた。

 
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