不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「灯、ありがとう」
「なんに対してのお礼だよ」
「ふふっ。今日まで私の手を離さないでいてくれたこと。私を諦めないでいてくれてありがとうって意味と、ついでに大好きって意味も込めてのお礼」
起き上がった灯の手に指をのせれば、その手をそっと握り返された。
温かい手。大きくて、優しい手。
彼と一緒ならこの先も、どんなときでも私は前を向いて歩いていける。
「バカ。俺のほうが好きだよ」
胸の奥がくすぐったい。
私は今、世界で一番苦手だった彼に、世界で一番幸せな恋をしている。
* * *
「すごい……。やっぱり、スイートルームは別格だね」
無事に海浜公園リベンジを果たし、ふたりで海風を堪能した私達は、灯が予め予約してくれていた近くのセレブレイト・ベイホテルにチェックインした。
ここからはもう完全に職業病だけれど、ふたりともホテルの敷地に足を踏み入れた瞬間から、フロントやここまでの導線、サービス、ホテルの内装やスタッフの接客対応などなど、逐一チェックしては良いところを上げて盛りあがってしまった。
「一応、競合他社だぞ。無駄にハシャイで堪能するなよ」
「ふふっ。でも、サービス向上のためにお客様目線に立つってすごく大事なことでしょ?」
「まぁ、それはそうだけどな」
「ほら見て、ベイホテルはアメニティにここのブランド使ってるよ。このブランド、最近海外セレブの間でも話題になってるし、やっぱりそういう流行りを積極的に取り入れていくのもいいよね」
スイートルームに入ったらまず、景色を眺めて恋人との甘い時間を楽しんで……なんて状況からは逸脱している。
だけどあれこれと部屋の中を探索する私を、灯は呆れながらも嬉しそうに眺めていた。