不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
 

「酷い……。まさか、灯がそんなこと言う人だとは思わなかった!」

「あっそ。でもそれは、牡丹が勝手に俺のことを勘違いしてただけだろ。自分の期待していた答えが返ってこなかったからって、いちいち喚き散らすなよ」


 この人は私が知っている藤嶋灯なのだろうか。

 だって、それまでの灯は女子が好むおままごとにも文句を言わず付き合ってくれたり、私が友達にもらったキーホルダーを学校帰りに落としたら、日が暮れるまで一緒に探してくれるような男の子だった。

 他にも数え切れないくらい、灯には助けられてきた。

 もしかして、そういうことが積もり積もって自分でも気づかぬうちに、灯を不快にさせていたの?


「あと、結婚の件だけど。俺は婚約破棄するつもりはないから」

「どういうこと……?」

「だから牡丹のご両親が言うとおり、俺は将来、牡丹と結婚するつもりだってことだよ。まぁ、牡丹が大学を卒業してからの話になるだろうけど、家に帰ったら改めて俺の両親にもそういうつもりだって俺の口から伝えるから」


 もう私のほうを見ようともせず、抑揚のない声で言った灯の姿が涙で滲んで見えなくなった。


「牡丹の両親にも、俺は牡丹と本当に結婚するつもりだからって伝えてやるよ。でも……もし、牡丹の勝手で破断になるようなことがあればどうなるか、さすがの牡丹もわかるよな?」


 私と灯は、ずっと対等な関係だと思っていた。

 私達は仲の良い幼馴染であり、気の置けない友人だと思っていたけれど、実際は違うのだと思い知らされた。

 絶対的な主導権と決定権は灯にあり、家と会社、そこにいる従業員たちを人質に取られたら私には従う以外の選択肢がない。

 
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