不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
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「ふぅ……今日も疲れた……」
その日、仕事を終えて帰宅した私は早々にお風呂に入って汗を流すと、無駄に広いリビングに置かれたソファの上で脱力した。
フジロイヤルから電車で一駅離れただけの駅近タワーマンションは地上四十八階建てで、私達の新居はその三十七階にあった。
住環境は文句なしだけど、灯とひとつ屋根の下に住んでいると思うと落ち着かないし、家で疲れを癒すどころか余計なストレスが溜まる一方だ。
「そういえば、今日も灯は遅くなるって言ってたっけ……」
だけどこの二週間、肝心の灯が家で過ごした時間は二十四時間にも満たない。
それほど総支配人という仕事が多忙を極めているということだけれど、私からすれば不幸中の幸いに他ならなかった。
私達は確かに婚姻届を提出し、戸籍上は夫婦になった。
でも、本当にそれだけだ。夫婦の営みとも言える夜の情事も未だにないどころか、キスだってチャペルでしたあの一回が最初で最後。
挙式の夜にはさすがにそういう空気になるかもしれないと身構えていたのだけれど、灯は挙式が終わるとさっさとタキシードを脱ぎ、前々から決まっていたという商談へと向かってしまった。