不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
『ぷ……っ、ははっ』
『な、なんで……っ、灯、笑ってるの?』
『ハハッ、ごめん。泣いてる牡丹が可愛くて、なんか色んなことがどうでもよくなって』
イジメが始まってからは学校に行くのも憂鬱だった。
だけど休んでしまうと卑怯なアイツらに負けたような気がして、意地でも学校に通い続けてやろうと前を向いた。
それでも内心では、こんな日々があとどれくらい続くんだろうと不安でたまらなかったんだ。
誰にも相談できなくて、悩んで、本当は苦しかった。
『牡丹と話してたら、なんかちょっと元気出た』
もう、さっさと体操服を洗ってしまおう。
牡丹と話しているうちに心が晴れた俺は、もう一度体操服を持って水道で洗おうとしたのだけれど、横から伸びてきた牡丹の手が俺の手を掴んで止めた。
『牡丹?』
『牡丹は、灯のこと、大好きだからね』
『え……』
『世界中の人たちが灯のことを悪く言っても、牡丹だけは、ずっとずっとずーーっと、灯のそばにいるんだから!』
そう言った牡丹の小さな手は温かくて、ほんの少しだけ震えていた。
涙で濡れた黒い瞳は今まで見てきたどんなものよりも綺麗で、見つめられているうちに心が絆され、泣きたくなった。