不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「すみません。つい、考えごとをしてしまって……」
「うん。そうやって素直に自分の非を認めて謝れるっていうのは山城さんの強みだね。でも、お客様には常に気持ちの良いおもてなしができるように、最善のサービスを心がけよう」
「はい。申し訳ありませんでした。以後気をつけます」
改めて姿勢を正せば、米田さんがお手本みたいな素敵な笑顔を浮かべた。
米田さんは、理想の上司を絵に描いたような人だ。スタッフの中で米田さんのことを悪く言う人はいないし、常連客からの信頼も厚い。
おまけにルックスも整っていて、実年齢の三十八歳よりも随分若く見えるし、何気ないときに見せる所作も綺麗。
米田さんが未だに独身なのは、このホテルの七不思議のひとつだ。もちろん、虎視眈々と彼の妻の座を狙っている女性スタッフは多いけれど、本人はスマートにかわしてばかりいる。
「まぁ、山城さんは疲れてて当たり前だけどね。体調不良で急遽休みになった戸川(とがわ)くんの穴を埋めてくれてたんだし、仕方ない部分もあるな」
「いえ、スタッフの誰かに何かあればフォローするのは当然ですし、仕事中に気を抜くのはプロ失格ですから言い訳なんてできません」
「ハハッ、ほんと真面目だよなぁ。でも、頑張りすぎて山城さんまで倒れちゃったら元も子もないし、今から俺が代わるから休憩行っておいで。しっかり休むことも仕事のひとつだ」
また背中をポンと叩かれ、思わず肩から力が抜けた。
フジロイヤルのフロントスタッフのシフトは、早番が八時から十七時まで、遅番が十三時から二十四時、夜勤が二十三時から翌日九時までという三交代制だ。
もともと私は今日は早番で、十七時あがりの予定だった。
けれど遅番で入るはずの後輩スタッフ、戸川くんが体調不良で休むことになったため、急遽退勤時間を延ばして働いていた。