不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「さぁ、ほら行った行った」
「……お気遣い、ありがとうございます。それじゃあお言葉に甘えて、少しだけ休憩を取らせていただきます」
正直に言うと、朝からほぼ立ちっぱなしなせいで足はパンパン、そろそろメイク直しもしておきたいと思っていたところだった。
きっと米田さんにはそんなことも全部お見通しで、最初から私を休ませるために来てくれたんだ。
「大丈夫だから、ゆっくり休んでおいで」
優しい声かけに心が解れた私は、米田さんに再度「ありがとうございます」と笑顔で告げたあと、バックヤードにあるスタッフルームへと向かった。
ああ……疲れた。
心の中でぽつりと漏れた本音は、多忙を極める仕事のせいだけではない。
むしろホテルフロントの仕事は自分の性に合っていて、大変だけど楽しいし日々充実している。
だから、私の心に蓄積した疲労の根本的な要因は、もっと別のところにあった。
そう──ほら。タイミング悪く、たった今、正面からこちらに向かって真っすぐに歩いてくる〝彼〟が、すべての元凶。
「……GM、お疲れ様です」
「ああ、藤嶋さん。お疲れ様」
白々しく私を自分と同じ苗字で呼んだ彼は、進路を塞ぐように前に立った。
つい苛立って眉根を寄せれば吸い込まれそうなほど黒く綺麗な瞳に射抜かれ、反射的に目を逸らしてしまう。