不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「あ……うん、そうだよね。安定期にも入ったし、いい加減、ちゃんと親にも伝えなきゃね」
爽やかな甘みをくれたオレンジジュースが、途端に味気なく感じて目を伏せた。
テーブルの木目を視線でなぞったら晴れていた心が曇って、心は鉛のように重たくなった。
私が両親に妊娠について報告するのを躊躇するのには理由がある。
まず、そもそも私自身が父と母を苦手に感じてしまっていること。
特に母には私の青春時代に、『灯に相応しい女性になるべし』という鎖を巻かれたせいでできた確執もあり、今ではあまり顔を合わせたくないとすら思っていた。
「とりあえず灯のご両親には、今すぐにでも灯から伝えてもらって大丈夫」
反対に灯のご両親に報告することは苦ではない。
おふたりは私達が正式に結婚すると伝えたときには、何度も私に『本当に灯でいいのか』と聞いてくれたのだ。
お父様は自分が私の両親に何気なく言った言葉で、私の運命を変えてしまったんじゃないかと最後まで気にしてくれていたらしく、ずっと後ろめたく感じていたようだった。
その気持ちは素直に嬉しかったし、今さら灯のお父さんに文句を言うつもりもなかったので、そのときの私は口を噤んで『気にしないでください』と答えたんだ。
「牡丹が報告してもいいって言うなら、うちの両親には電話で簡単に伝えるけど……」
「うん、大丈夫だよ。むしろ今日までこっちの都合に合わせてもらってごめんね」
「いや、それは前に言ったとおり、全然いいんだけど。牡丹の両親への報告には、俺も同席したほうがよくないか? 一応……改めて、ご挨拶も兼ねてさ」
灯なりに心配して気遣ってくれたのだろう。
私は灯にはハッキリとは伝えていないけれど、灯は私と両親の関係が良好ではないことにも気がついているようだった。
そして、その原因が自分であることも敏い彼はわかっているんだろう。