不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
 


「一応、出産は秋頃になる予定で……」

「そっ、それは当然、灯くんとの子供ってことよね⁉」

「え? あ、う、うん。もちろん。灯との子供だよ」


 私の答えを聞いた両親は、まるで天国にでも来たみたいな恍惚とした表情を浮かべた。


「でかしたぞ、牡丹! これでようやく、灯くんの妻としての役目が果たせるな!」

「え……」

「もうっ、あなたってばどうしてすぐに話してくれなかったのよ! そんな安定期に入るまで隠してて……。こっちはあなたからなかなか妊娠の報告が聞けなくて、ずっと心配していたんだから!」


 前のめりに祝福されているのに、私の頭の中はこんがらがって、うまく返事ができなくなった。


「それで⁉ 性別はどっちなんだ⁉」

「もちろん男の子よね! だって牡丹は、藤嶋家の跡継ぎを産まなきゃいけないものね!」


 だけど次の瞬間、母から発せられた言葉に絶望の海に突き落とされた気分になった。

 藤嶋家の跡継ぎ……。灯は藤嶋家の長男なので、もちろんいずれはお父様の跡を継いでフジリゾートのトップに立つだろう。

 そうなれば次は灯の子供が──つまり私達の子が、藤嶋の家を将来は背負って立つことになる。

 それは別に当たり前のことで、今さら母に言われるまでもなく理解しているつもりだったけど、ここまで強く意識させられることはこれまでなかった。

 私はただ、お腹にいるこの子を元気に産んであげたい。そう思って、今日まで過ごしてきたんだ。

 そこに義務感なんて抱いたことはないし、ただただお腹の子を愛おしく思っていただけだった。

 
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