双子を身ごもったら、御曹司の独占溺愛が始まりました
 しかし今回は完全に副社長のミスだった。

 土地の売買に失敗し、先方は社長を寄越せと要求してきた。しかし父さんは今、別の案件を抱えていてスケジュール的に沖縄に向かうのは困難で、そこで息子である俺に白羽の矢が立ったんだ。

「今回の出張は大変でしたね、副社長の尻ぬぐいのために専務が頭を下げて回ることになったのですから。まぁ、副社長には恩が売れてよかったのではないでしょうか?」

「そうだな」

 密かに社長の座を狙っている副社長に、俺はよく思われていない。イギリスへの赴任も、勉強という名目で副社長が提案してきたものだった。

 俺がいない間に社内でも自分の基盤を固めておこうと思ったようだ。それも今回のミスで水の泡だろう。

「これで結婚へ近づいたのではないですか? 奥様も無理に尾上バンクの娘との結婚を勧める理由もなくなったでしょう」

「あぁ」

 母が美野里との結婚を勧めてきたのも、俺の社内での確固たる地位を得るためでもあった。
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