双子を身ごもったら、御曹司の独占溺愛が始まりました
 不安をすぐに払拭してソファから立ち上がった。いつの間にか夜が明けていて、カーテンの隙間から日差しが差し込んでいる。

 ゆっくりと窓へ向かい、カーテンを勢いよく開けると太陽の眩しさに目を細めた。

 日本とこっちの時差は約八時間。今は五時過ぎだから日本では十三時頃か。きっと星奈はあのカフェでせわしなく働いている頃だろう。……いや、本当にそうなのか?

 そもそも音信不通になった原因は俺の愛想が尽きたからではなく、彼女の身になにかあった可能性もある。
 すぐに星奈の安否を確認しようも、その術がない。

 こんなことなら日本を発つ前に彼女のご両親に挨拶をしていくべきだった。
 よく考えれば俺たちに共通の友人はおらず、カフェに仲が良い友人がいるとはよく聞いていたけれど、その友人の連絡先も知らない。

 これでは星奈になにかあったとしても、知ることができないじゃないか。

 どうして離れる前にこのことに気づかなかったのだろうか。すぐには会いにいけない距離にいるんだ。

 信用のおける友人を星奈に会わせて、交流を持たせるべきだった。なにかあったらすぐに俺に連絡がくるようにしておけば、こんなに困ることもなかったのに。

「くそっ」

 行き場のない怒りをぶつけるように壁を叩いた。
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