13番目の恋人
「失礼します」
ちゃんとノックをした後で、常務の返事を待って中に入った。

先ほど、室長が退室していたのは確認した。だけれど一度ぐるりと部屋を見渡した。そんな私に常務、改め、俊くんが苦笑いする。

「悪かったよ。だけど彼は似たような境遇だし、ゴシップに興味ないからな、安心しろ」
「説明してくれたの?」
「いいや、でも何も聞かれなかった。頭のキレるやつだし……それ以前に興味がないのだろう」
「あ、そうか」

確かに、私と俊くんが知り合いかどうか興味がない人にとっては、そうなのかもしれない。
そのことに、過剰反応してしまった気がして、少し頬が熱くなった。
「婚約披露をしようと思ってな、正式には後程招待するつもりだが、事前に小百合の意思を聞いておきたくて。大それたものではなく、軽い御披露目だ」
「うちのお兄ちゃんが来るの?」
「……そうだな」
「この会社の人は?」
「何人か招待予定だ」
「……俊くん、私は、遠慮しようと思う。あの、お祝いはしたい、だから……」
「あー、大丈夫、気楽なやつだからな。わかってる、気持ちは。披露宴には来てくれ」

そう言われて頷いた。友人としてなのか、部下としてなのかわからないけれど。

「おめでとう、俊くん」
私がそう言うと俊くんは幸せそうに目を細めた。
< 22 / 219 >

この作品をシェア

pagetop