13番目の恋人
「お前、彼女と結婚するんだろ?」
 俺がそう訊くと、俊彦は目を見開く。
 
「まさか、何でそうなる。俺が結婚するのは別の人だよ」

 …………。
 長い付き合いであったのに、俺はこの男がわからなくなった。そんなタイプではなかったと、誠実な男だと思っていた。こんな近くで手を出しておいて、自分の結婚が決まると、相手にも男を都合するということか。
 
「お前が、彼女と結婚すればいいだろう」
「はは!それ、小百合も同じ事言ってたわ」
 
それでも別の女性と結婚するのか、あんな若い子にそんな事を言わせるなんて。
 
「恋愛と結婚は違うと思ってる、それはお前もだろう?」
「確かにそうかもしれないが……酷くないか?」
 「酷い? いや、彼女の希望だ。それならば、少しでもいい相手をと、そのリストは俺が勝手に作ったんだけどな」
「彼女……の」
 
考えただけで胸が痛い。そのリストを彼女はどんな気持ちで受け取ったのだろう。

「お前は、まだ恋愛する気になれないんだろう? それに、結婚する相手は決まってる……だろ? だから、お前はダメってだけだ。傷ついて欲しくないんだ」
 
確かに、俺と俊彦の境遇はとても似ている。同じような男に何度も同じ目に遭わされては可哀想だと思うくらいの情はあるのか。
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