魔女は今日も、忙しく恋する!
 次の日、魔女は変身したコウモリと仲良くホウキに乗って、月を見ながら出掛けた。

「落ちないでよ?あんたはのんびりしてるんだから」

「俺はコウモリだから飛べるよ?」

 呑気なコウモリに彼女は苦笑い。

「今は人間の姿に変身中でしょ!」

「そうだったね〜」

 二人は笑い合う。

 そして人間たちの住むあたりに差し掛かると、人間の家からインキュバスが出てくるのが見えた。

「あぁ、ローゼ。…恋人かな?」

「そうよ」

「君も隅に置けないね。…あれ…?」

 笑顔のインキュバスは、すぐに何かに気付く。

「あぁ、そうだったんだね…。君…」

 インキュバスは人間姿のコウモリに声を掛けた。

「良かったね。ローゼは、やっと君に振り向いたんだね」

「え??」

 人間姿のコウモリは首を傾げる。
 インキュバスは他に何も言わず、いつものように穏やかに笑って二人に手を振った。


「なに?どうしたのよ??」

「俺、インキュバス見に行っているとき、普通の姿で行っていたのに、何でいま俺だってわかったんだろう??」

 あのインキュバスはいつも掴みどころがないわりに、そのように勘がいいところがあった。
 自分はいつもそれに振り回されていた事を、今は嫌というほど実感している。

「…まあ、いいわよ」

 魔女はさっぱりとした気分でそう言った。
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