新人メイドと引きこもり令嬢 ―2つの姿で過ごす、2つの物語―
 主人はそばに座っていた娘をまた抱きしめた。

「そうだ…毎夜、お前のもとに行っていたのは私だ…。あんな嘘まで付いて…。お前に候補が決まった当初は、調べる気も無かった。脅し追い出す事だけだった」

「…。」

「だが、メイド姿をして会ったその夜。お前を見て、気になって仕方が無かった。お前の両親に手紙を出して素性を聞き出し、仕事の後会いに行くと二人とも言っていた。娘にはすまなかった、と」

「そんな…」

 両親は自分たちの娘を見知らぬ貴族のもとにやることに、とっくに後悔していたということになる。
 しかし自分はそうとも知らずに…

「そうだ、お前は両親の為に私のもとに…」

「わ、私…」

 娘の目から涙が溢れた。

「許せ…お前には辛い想いをさせた。お前の両親も、もうお前に結婚を無理強いすることは無いはずだ」

「ち、違うんです…私、ずっとご主人様を誤解していて…。それに本当に私、コウさんが…」

 主人は震えながら泣く娘を抱き締め、涙を拭ってやると、小さな声で呟いた。

「…そんなに…俺のことを好きでいてくれたのか…?」

 娘は主人の腕の中で強く頷いた。

「お前に酷いことをした男だ…」

「いいえ…!私にここにいる希望をくれたのはコウさんです…私はコウさんが大好きです…!」
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