娘は獣の腕の中
「あんたを好きになれるようにする…だから無関係なあの娘を解放してやってくれ……」

獣は失意の感情を必死で隠し、仕事を終えた日暮れ頃、また家の近くまでやってきた魔女に言った。

「無関係?嘘ね。あなたがあの子を想っているのは最初からわかっていたもの。」

魔女は澄ました顔でそう言った。

「頼む!俺はどうなってもいい!アイツだけは…!!」

「まったく…でもそういうあなたも悪くない。…あの子からあなたのすべての記憶を消すわ。あなたは私のものになるの。普通じゃつまらないから最初は…ふふっ…」

魔女の瞳が赤く光り、獣はそのまま倒れた。そして、次に起きたときには、

「……あれ…?俺…」

彼は何も覚えていなかった。

「起きた?」

獣の前にはローブを着た女がいる。

「…あんたは…?」

「忘れちゃったの?あなたの幼馴染の、魔女の『ミスト』よ?『お兄ちゃん』、会いたかったわ!」

「ああ!お前、会う約束をして、ここまで来てくれたのか!俺は…え…!?」

男は自分の姿が獣だったことに気づいた。

「お兄ちゃんがあんまり気持ち良さそうに眠っていたから、私の魔法でいたずらしちゃったの。会いたかったのよ?」

魔女は獣を人間の姿に戻した。
いたずらっ子のような顔でウインクする魔女に、男は嬉しそうに笑い、昔愛しい娘にしていたように優しく頭を撫でた。

「寂しかったんだろう。お前もそう思っていてくれて嬉しい。」

「お兄ちゃん…?私ね、あなたと昼も夜もずっとそばにいたいの……家に連れて行ってくれる…?」

魔女は下を向いて恥ずかしそうに言ってみせた。

「お前…俺とでいいのか…?」

「もちろん!お兄ちゃんが好きなの。ね…私を家に連れて行って……」

「ああ…!こっちだ。」

「…ふふっ……」

幸せそうな男の後ろをついて歩く魔女は、口を歪めてニヤリと笑った。
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