君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~
「記憶、ですか?」
「ええ。健忘症といって、何らかの拍子に一部の記憶がなくなったりすることはあります。まだ判断はつかないですが、その可能性が」
「え、でも、何も忘れていることはないです。仕事も変わらずできているし、忘れてしまった人もいないですし、生活に何も支障は……」
記憶喪失なんかになっていれば、すでに気付いて苦しんでいるはずだ。
でも、日常で何も困っていることはない。
「生活に支障が出ていないなら何より。深刻に捉えなくて構わないです」
「そういうものなんですか?」
「そういうものです。気にしなくていい」
言い切られて、つい肩をすくめる。
でも、何かの記憶を失っているかもしれないと思うと、気にしなくていいと言われても気にかかる。
「よし……診察はおしまいです。お疲れ様でした」
「あ、はい。ありがとうございました」
ひとりぼんやりと考え込んでいると、診察終了の声がかかる。
慌てて椅子を立ち上がった。