魔法の恋の行方・魔女の媚薬(シリーズ3 グリセラとリーディアン)

狩猟の館・(庭) 18-21ページ

<狩猟の館・庭・数日後・11時>

その後、
グリセラとイ―ディス先生は
姿を見せなかった。
薬草採集に、出かけているとの事だった。

サマースクールも、明日で終了というので、リードとクリスは、
生徒たちを連れて、馬で遠乗りに行く計画を立てていた。

午後からの遠乗りを、生徒たちは楽しみにしている。
リードとクリスは、馬の状態を確認するために、馬小屋のほうに向かっていた。

馬小屋の裏手の雑木林で、
犬が興奮状態で大声で吠えている。

「なんだろう?行ってみよう!」
クリスがリードに声をかけた。

犬は大きな木の上を見上げて、
さかんに吠えている。
興奮している犬を押しのけ、
リードとクリスは、木の上を見上げた。

グリセラがいた。
高い所の二股の部分で、幹にしがみついている。

「グリセラっ?」
リードが叫んだ。
「降りられなくなったのかっ?」
グリセラが下を見た。
その手には何か抱えている。

子猫だった。

すぐにリードが動いた。
「僕が犬を何とかする。
君は納屋かどこかで、はしごを探して持ってきてくれ!」

クリスはうなずくと、納屋に向かって走って行った。
リードは興奮している犬の首輪を
つかむと、何とか引っ張って、馬小屋脇のロープにつないだ。

「グリセラ、今降ろしてやるから・・猫を離せっ!」
リードは大声で叫んだが、
グリセラは顔を横に振った。

よく、あの高さまで登ったものだ。

クリスがはしごを引きずりながら、木のそばまで来た。
納屋の2階に上がるための
大きなはしごだ。

二人で何とか、木の幹に立てかけた。
リードはクリスに
「下で押さえてくれ、僕が行くから」
リードがはしごを登っていく。

二股の所から、大きな別の枝が出ていたので、それを掴む(つかむ)ことができた。

グリセラの顔は青ざめていた。
それに眼鏡がない。
どこかにひっかけて、落としたのだろう。
紫の瞳は涙ぐんでいた。

「グリセラ、子猫を抱いたままでは降りられない・・わかるね」

リードは、グリセラを怖がらせないように、静かに言った。
グリセラはうなずいた。

「子猫からおろそう、
だから、こっちに渡してくれ。」
リードは片手を伸ばすと、
グリセラは抱えていた子猫を
その手に渡した。

リードは、上着のポケットに子猫を入れた。
そして、はしごを降りて行き
地面に着くと、子猫を離してやった。


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