魔法の恋の行方・魔女の媚薬(シリーズ3 グリセラとリーディアン)
<狩猟の館・庭・雑木林・12時>

「リード、早くしろよっ、
時間がないぞ!!」
クリスが叫んだ。

グリセラも心配げに、上を見上げている。
「わかった!今降りる」
リードが、はしごの中段くらいまで降りた時だった。

「うわ・・」
いきなりの突風が吹き、
リードの体が揺れ、バランスが崩れた。

リードはそのまま下の低木が、
密集している植え込みに落ちた。
「リード!大丈夫か?怪我はないか???」

クリスがあわてて、植え込みを覗いた。
リードは、植え込みから這い出てきた。
「ああ、大丈夫だ。
植え込みで助かった。枝で擦り傷をつくっただけだ」

「本当に!大丈夫ですか?
私に見せてくださいっ!」
イ―ディス先生が、速足で近づいてきた。

そして、リードの前に片膝をついて早口で言った。
「痛みはないですか?打ったところは?」

リードは、
上着についている枝や葉を手で払いながら、立ち上がった。
「ええ、大丈夫です。問題ありません」
イ―ディス先生も立ち上がり、
そして振り向いてグリセラを見た。

グリセラは眼鏡をかけていない。

彼はしばらく見つめていたが、
近くに来るように、指で合図をした。

「そうですか。
しかし、私の使用人のせいで、
あなたが危うく大けがをするところでした・・・」

グリセラは、うつむいてイ―ディス先生の正面に立った。
拳を握りしめ、肩が震えている。

その時
イ―ディス先生のステッキが
グリセラに向けて、振り上げられた。
「・・っ!?」

リードがステッキをつかんでいた。
「やめてください!・・
彼女が悪いわけではない!」

二人は、にらみ合う状態になったが、
リードが引く事はなかった。
イ―ディス先生の瞳が揺らいだ。

「ふん、
レジアの誇り高い騎士が・・
姫君を助けるのか・・
こいつは姫ではないぞ。
わかった。
君に免じて罰するのはやめよう・・ステッキを放しなさい」

リードは、
先生の目を離さずに言った。
「わかりました」

リードは手を放した。
グリセラは
そのまま立ちすくんでいた。

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