婚約破棄をして乗り換えた元彼と妹と私の幸せ【現代、短編】
「あの……お姉ちゃんに……」
 彼氏は柚芽がお姉ちゃんと言葉を口にしただけで、カッとなった。
「なんだ、まさか、取り上げられたのか?」
「う、ううん、違うの、そうじゃないの、あの、お姉ちゃんに先に……使ってもらいたくて、それで、あの……」
 彼氏はさらにカッとなる。
「なんだって?あいつ……自分に先に使わせろって言ったのか!くそっ。高い金だして、俺は柚芽にプレゼントしたんだ!あいつに使わせるために買ったわけじゃないっ!」
「あ、あの、ごめんなさい……」
 何故、柚芽が謝るんだ。
「だって、私、私が……」
 ぐずぐずと言葉を詰まらせて泣き出す柚芽。
 柚芽の言葉は足りない。
 相手が勝手に足りない部分を補完する。
 柚芽を姉が酷い目に合わせていると。
 柚芽が勝手に姉を思うためにした行動までも、姉の評判を落とす結果となっている。
 かわいい柚芽が。
 大人しくけなげな柚芽が。
 弱い立場の柚芽が。
 姉に、虐げられている。
 姉に、虐められている。
 姉に、酷い目にあわされている。
 庇護欲をそそる柚芽の存在。
 俺が守ってやらなくちゃという男の自己満足を満たす。
 俺は女を守れる男だ。
 俺は彼女にとってヒーローだ。
 悪の存在姉から、彼女を守る。
 彼女を救う。
「俺が、ガツンと言ってやる」
「だめ、やめて、そんなことしたら、私……お姉ちゃんに嫌われちゃうよ」
「柚芽、目を覚ますんだ。あんな奴に嫌われたって大丈夫だ。俺がいるだろう」
 柚芽が彼氏を涙をいっぱいためた目で見た。
「ずっと、一緒にいてくれる?」
「ああ、もちろんだ。俺がお前を一生守ってやる」
「本当?」
 男の自己満足。
 弱い女を守る俺、カッコいい。
 だが、しょせんは相手のためではない。自分の自己満足のための行動だ。
「信じてもいいの?」
「ああ、もちろん」
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