婚約破棄をして乗り換えた元彼と妹と私の幸せ【現代、短編】
 でもね、それも、何度も何度も言えば自慢ばっかりして嫌な奴って嫌われるんだよ?
「あのね、お姉ちゃん大好きだから、一番に使っていいよ」
 柚芽は基本的には悪い子ではない……今の言葉も、本心だから怖い。
 騙すつもりも嵌めるつもりもない。
 だから、簡単に昔は騙されてしまっていた。
 これだって、うっかり、有難うといって受け取ろうものなら……。
 もらったプレゼントは、お姉ちゃんが先に使ったという事実を人に言うのだろう。
 せっかく上げたのに、お姉ちゃんが取り上げたのか?なんてひどい姉だ!と、尾ひれがついて私が悪役になる。
 不思議なことに、柚芽の足りない言葉を、男たちは、勝手に補完して意味を与える。
「ううん違うの、とても素敵なプレゼントだから、大好きなお姉ちゃんにも使ってもらいたくて」
 と、男をフォローするために、言った言葉も、柚芽はけなげだな。そんな酷い姉をかばおうとするなんて。と脳内変換されるのである。
「ありがとう、柚芽。私も柚芽のこと大好きだから」
 と口にして胸の中がグルグルと黒いものが渦巻く。
 妹は可愛い。嫌いになれない。
 だけれど、大好きにもなれない。
 突然現れる、天使の顔をした妹の中の悪魔。
 何でも欲しがり、思い通りにならなければ癇癪を起し、人の話は聞かない、自分の思い通りにならなければ自分はいらない人間だ、死んだ方がいいんだと泣き始める。いつか本当に自殺するんじゃないかと……心配して慰めていた時期はとうに過ぎた。
「柚芽が先に使って。貸してほしい時には、声をかけるから」
 当たり障りのない言葉で、鞄を貸してもらうのを辞退する。
 そこで、私は言葉選びを失敗したことに気が付いていなかった。

★芽維と元カレ★
「あれ?あの鞄は持ってこなかったの?」
 彼氏が柚芽がまたリュックで来たので尋ねた。
 もったいなくて使えないというつもりじゃないよな?
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