婚約破棄をして乗り換えた元彼と妹と私の幸せ【現代、短編】
「でも、柚芽だって、いつも私のことを、酷い酷いっていうでしょ」
 柚芽は本当に無自覚。だけれど、その行動で友達は逃げていく。
 クラスの女子に嫌われる。どうしてと泣いて男子がかばう。そしてさらに女子に嫌われる。
 友達が欲しい寂しいと言っていても、無自覚だから治らない。
 会社に入っても同じようなことが繰り返され、3度会社を辞めている。
 無自覚だから許してやれって、誰が言える?
「そ、それは……本気じゃないもん。怒ったときについ口から出ちゃうだけで……柚芽は本当にお姉ちゃんを酷いなんて思ってないし、お姉ちゃん大好きだし。嫌われたくないし……」
 調子のいいことを言ってご機嫌を取ろうとしているわけでもない。
 嘘じゃないのは知ってる。
 だからって、何もかも許せるわけじゃない。
 でも、どうしても許せないようなことをされてもいない。
 時々距離を置きたくなる。でも、世界に1人だけの妹だ。
 私のことを好きだと言ってくれる家族だ。
 耐えられなくなったら、家を出ればいい。


「何、これ……」
 朝起きてみたら、台所がすごい状態になっていた。
 酷い散らかりようだ。
「えへへ、見て、ケーキ作ったの。エリックさんにあげようと思って」
 ま、た、手作りお菓子のプレゼントか。
 相手が甘いもの好きか嫌いかもわからない、アレルギーがあるかないかも分からないのに……。
「エリックさん喜んでくれるかなぁ。これ渡して、お姉ちゃんをよろしくお願いしますって言うの変かな?」
「……柚芽、台所、ちゃんと片付けてよ」
 ぎろりとにらみつける。
「う、うん、でも、まだ出かける準備もしなくちゃいけないし、ケーキをラッピングしないといけないから、後で」
 後でじゃないよ、後でじゃ!
 時間が経てば溶けたチョコは固まって洗いにくくなるし、粉もパキパキにこべりついて落としにくくなる。
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