離してよ、牙城くん。


あたりまえに、返答はなし。



ちなみに、なぜ屋上なのかと言うと、牙城くんは高いところと広いところが好きだから。





重い扉を開けると、やはり地にへばりついている牙城くんを発見。


顔に腕をのせて、しっかり睡眠中。





「牙城くーん……」




授業はじまっちゃうよ、という意味を込めて声を落とす。


綺麗なお顔は、彼の腕が邪魔をして見えない。



もうぐっすり寝ちゃったかな。

きっと、起きないなあ。




仕方なく、諦めモードで「……おやすみ、」と柔らかくこぼした、んだけど。


……と、その声が聞こえたのか、牙城くんはかすかに口を開いた。





「……なーに百々ちゃん、来たの」





とろんとした甘い声。


牙城くんは、ぱちりと瞳を開けた。






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