離してよ、牙城くん。


切れ長の瞳は透き通っていて、そこにはわたしだけが映っている。




「き、来たよ……!
牙城くんが、また教室にいなかったから、」


「他クラスなのに、よく見てんねー」




「……それは!
さっき、会ったばかりで気になったからだもん……っ」



「そっかそっか。
ムキになっちゃってさ。もーカワイーなあ、百々ちゃん」




「〜〜もう牙城くん探すの、やめるっ」




プイッと踵を返して教室に戻ろうとすると、牙城くんはくすくす笑って「やだよ」と曖昧な引き止め方をする。



「俺、百々ちゃん抱きしめたらもっと寝れる気がするんだよなー……」





意味不明なことを呟くと、わたしをいとも簡単に倒して、覆いかぶさってくる。



きっと、いま、ここに花葉がいたのなら。



彼女は必ず言うと思う。





──── これって世でいう、ゆ、床ドン……?!





真上には、あおい空と牙城くん。


ドキドキと胸が高鳴って、彼にまで聞こえてしまいそう。






< 34 / 381 >

この作品をシェア

pagetop