離してよ、牙城くん。
切れ長の瞳は透き通っていて、そこにはわたしだけが映っている。
「き、来たよ……!
牙城くんが、また教室にいなかったから、」
「他クラスなのに、よく見てんねー」
「……それは!
さっき、会ったばかりで気になったからだもん……っ」
「そっかそっか。
ムキになっちゃってさ。もーカワイーなあ、百々ちゃん」
「〜〜もう牙城くん探すの、やめるっ」
プイッと踵を返して教室に戻ろうとすると、牙城くんはくすくす笑って「やだよ」と曖昧な引き止め方をする。
「俺、百々ちゃん抱きしめたらもっと寝れる気がするんだよなー……」
意味不明なことを呟くと、わたしをいとも簡単に倒して、覆いかぶさってくる。
きっと、いま、ここに花葉がいたのなら。
彼女は必ず言うと思う。
──── これって世でいう、ゆ、床ドン……?!
真上には、あおい空と牙城くん。
ドキドキと胸が高鳴って、彼にまで聞こえてしまいそう。