離してよ、牙城くん。
なにも感じてなさそうな表情までも、わたしの心臓が暴れ出す。
「なあ、噛みついていい?」
「っか、かみ……?!」
やだ、変なこと言わないで。
しかも、余裕そうに笑うのも狡い。
「だめ?」
「だ、だめ!」
「なんで」
「だ、だって、牙城くん、……気まぐれだし、」
「気まぐれ?
ちがうね、俺、ずっと思ってんだけどなー」
────“百々ちゃん食いたい”、って。
「う、ぁ……、もうしゃべらないで、」
かああっと頰が真っ赤になるのが、自分でもわかってしまうんだもん。
恥ずかしくて、恥ずかしくて。
ふたりを纏う空気が熱く、甘く侵されていく。