傲慢?ワガママ?悪役令嬢?それでかまわなくってよ!~聖女の力なんて使ってやるもんですか!!
ファルロが立ち去ると東屋が静寂に包まれ、風の音が耳障りに聞こえる。
「…………」
ファルロの後ろ姿を見つめていたセリカは、涙を流していた。その顔には悲しみといった悲壮感はまるでなく、ただ瞳から水を流している……。
まるで人形が涙を流しているかのようで、見ている方が辛くなるような涙だった。
「セリカ様……」
オウガに声をかけられてもセリカは微動だにしなかった。オウガが視界に入ってきても瞬きもせずに涙を流すセリカを見つめ、オウガの顔は悲痛に歪んでいた。
オウガ……何故あなたがそんな顔をするの?
「セリカ様あなたは一体何がしたいのですか?」
何がしたいかですって?
やりたいことなど何もない。
ただ……。
「私はお父様、お母様、領民たちに逢いたい……それだけ……」
セリカのその言葉にオウガの眉が悲しそうにハの字に寄せられる。
セリカの両親や領民たちは先の戦争で亡くなっている。辺境伯領で暮らしていたセリカの両親や領民たちは戦争に巻き込まれてしまったと聞いていた。何故辺境伯領で戦争が起きたのかは未だにわかっていない。隣国もこの件に対して、自分の国は何もしていないと抗議を続けていて、未だに調査中だった。
「セリカ様のご両親は……」
「わかっているわ……あいつらに、殺されてしまったもの」
あいつらとは?
オウガはセリカにあいつらとは誰なのか、問おうとしたところでセリカは部屋へと足早に向かってしまった。
あいつらとは一体誰のことなんだ……。
オウガの中で分からないことがもう一つ増えてしまった。
「…………」
わからないことだらけだ。