傲慢?ワガママ?悪役令嬢?それでかまわなくってよ!~聖女の力なんて使ってやるもんですか!!
朝になり、同じ毎日が始まる。
男たちが私に群がってくる。
機嫌を取り、ごまをすり、媚へつらう。
今日も贈り物を私の元まで運び、食べ物を口に運ぼうとする。
まるで働きアリや蜂のよう。
「セリカ様、今日はよく冷えたゼリーを用意しました。良かったら一口でも召し上がってみてください」
今日は男たちではなく、可愛らしい侍女が薦めてきた。
それは何度も何度もしつこいほどに……。
可愛らしい侍女がセリカの口元までゼリーの乗ったスプーンを運んでくる。それをセリカは例のごとく扇で叩き落した。
パチンッという音が部屋に響き渡り、叩かれた侍女は大きな瞳から涙を流しながらセリカを見つめていた。
これは何の余興だろう。
興覚めもいいところ。
セリカは冷たい瞳で侍女を見つめた。
「セリカ様一口でいいので……」
それでもセリカにゼリーを食べさせたいのか潤んだ瞳で訴えてくる。その場にいた人々の空気が、ゼリーを食べろと言っているかのようで居心地が悪い。
セリカは溜め息を付くとスプーンを持ちそれを口に持っていく。スプーンが唇に触れる瞬間、隣で今か今かと見守っていた侍女の口の中に無理やりスプーンを突っ込み、喉の奥に流し込むよう軽く顎を持ち上げた。すると侍女がゴクリとゼリーを飲み込んだ。
ゼリーを飲み込んでしまった侍女が目を見開き、ガクリと床に膝をつくと苦しみだした。ハーハーと呼吸を荒くし、体を赤く染めていく。異常なその光景に周りにいた人々が医師を呼ぶようにと慌ただしく動き回る。それをセリカは面白いものを見るように高笑いをして見せた。
「オーっほほほほほほ……まあ、一体何があったのかしら?なんて面白い余興ですこと……」
ガクガクと震える侍女に近づいたセリカは背中に手を当て何かを囁いた。そしてまた高笑いを見せる。
「オーっほほほほほほ……バカな子ね。私は聖女でもあなたは助けてあげないわ。さあ、行くわよオウガ」
セリカは倒れている侍女を横目で見ながら不敵に笑い部屋から出て行くと、そのままいつもの中庭の東屋へ逃げ込んだ。東屋の中に入り誰もいないことを確認すると、寒くもないのに体がガクガクと震えだす。セリカは先ほどの態度が嘘のように顔を青ざめ、震える体を両腕で抱きしめていた。
「もう嫌だ。わかっていたのに……怖い。」
あの薬はきっと媚薬だ。
媚薬を飲ませて辱め聖女の力を使わせようとした?
それとも体の関係を持てば従順になるとでも?
侮辱を受ければあいつらに従うとでも?
ふざけるな。
ふざけるな。
ふざけるな。