傲慢?ワガママ?悪役令嬢?それでかまわなくってよ!~聖女の力なんて使ってやるもんですか!!
あれから数日が過ぎていた。
あの日、起こったことは全て秘密裏に処理され、まるであの日なにも起こっていないかのようだった。
おかしい……。
あの侍女はどうしたのか?
まるでわからない。
セリカ様も特に変わった様子もなく、男たちを侍らせ笑顔を向けている。
男たちも何もなかったかのようだ。
何かが気持ち悪い。
策略?陰謀?……。
こんな考え方……俺だけがおかしいのか?
オウガはあの日のことは一旦頭の隅へと追いやり、セリカを見つめた。
そして気づかされる。
セリカのあの行動……男を侍らせるその姿に偽りがあることに。
男を侍らせ笑っているが楽しんでいない。高笑いを見せても全く目が笑っていない。
なぜ今まで気づかなかったんだ。
自分を守るように悪態をつき、人を寄せ付けないようにしている。
男達を使い、それ以外の人間を自分に近づかせないようにしているのだ。
何をそんなに恐れているのか?
おびえているのか?
そして毎日、逃げ込むように中庭の東屋で過ごしている。
そんなある日、セリカを部屋まで迎えに行ったオウガの耳に美しい歌声が聞こえてきた。
それは優しく心地の良い、透き通るような歌声。
**~
命を紡ぎ空へと舞う白き羽
星の子よ生きなさい
寄り添う魂よ
よみがえれ
あなたの幸せを願い、声に乗せて歌いましょう
**~
それは聖女の歌声。
優しく歌うセリカの手の上には怪我をした小鳥がいた。セリカが歌い出すと小鳥の体が光に包まれ傷が癒えていく。
その姿、歌声はまさしく聖女。
小鳥の傷が癒えたことを確認したセリカが微笑んだ。それはいつもの傲慢で意地悪な笑みではない。空気をも変えてしまうような優しい微笑みにオウガは立ち尽くし目を見開いた。
ドクンッドクンッと大きく心臓が痛いぐらいに音を立てだし、オウガは耐えきれず、騎士の制服の胸元を鷲掴みにした。
何だこれは……。
ぐっと唇を嚙みしめ、苦しそうにセリカを見つめた。
自分の目の前にいる令嬢は本当にセリカ様なのか?
信じられない……。
いつもの傲慢で我儘な姿と聖女の姿……どちらが本当の姿なんだ。