傲慢?ワガママ?悪役令嬢?それでかまわなくってよ!~聖女の力なんて使ってやるもんですか!!
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星々の煌く空の下、セリカの暮らすアイドニア王国の王城にて晩餐会が行われていた。
晩餐会会場となる広間には沢山の貴族たちが集まり、噂話に花を咲かせ、若い男女は楽しそうに2人ペアでダンスを楽しんでいる。
音楽を奏でる奏者たちはそんな貴族たちの要望に応えゆっくりな音楽や、ステップの速い曲などを演奏し楽しませる。
ふんっ。
貴族たちはお気楽ね。
バカな人たち。
天井でキラキラと輝くシャンデリアに照らされて一人の令嬢が姿を現した。すると会場がより一層ざわつきを見せ、そこにいた人々の視線が令嬢に集まった。その視線は身体に突き刺さるように冷ややかで、さげすむようなものだった。
貴族夫人たちは扇で口元を隠し、ひそひそと話をしながら冷笑を浮かべている。
「ほら、来ましてよ。男ったらしの聖女様が……。ふふふ」
「ほほほ……。やっとお出ましね。阿婆擦れ聖女様が……」
わざとセリカに聞こえるように言っているのだろう。面白そうに目を細めセリカに視線を向けている。そんな視線や言葉をもろとませず、セリカは広間の奥へと進んでいく。そこへ見事な長い金色の髪を綺麗に結い上げた少し釣り目がちな令嬢がセリカの行く手を阻んだ。
「セリカ様ごきげんよう。今日は殿方たちは一緒ではなくって?殿方から沢山の貢物が届いているとか?お噂、お聞きしましてよ」
「シャルロッテ・ビラ・モンテル様ごきげんよう。噂ですか?」
「沢山の殿方を侍らせ、貢がせているとか……」
「まあ!!そんな噂が?」
「あら?違いましたの?」
「私は何も……。プレゼントを殿方たちが勝手にくださるのです。もしかしてシャルロッテ様も欲しかったのですか?オモテにならない方は可哀そうですわね」
セリカが扇で隠した口の口角を上げると自然と目が細まる。それを見たシャルロッテがワナワナと震えながら顔を赤くし、声を上げようとしたところで王族たちが広間の奥から登場した。
王が高らかに向上を述べ貴族たちが頭を垂れる。
セリカはその様子を冷ややかに、ゴミを見るようなまなざしを向けていた。
こんな場所に長居はしたくはないが王に挨拶をしなければ部屋に戻ることも許されない。それはあまりにセリカが舞踏会や晩餐会というものに参加しないため王が取り決めたもの。晩餐会に最後までいる必要はないが、少しでも顔を出すこと。その時、王に挨拶をすればすぐに部屋に戻ってもかまわないし、その後も咎めることはしないというものだった。
「ふー」っと周りに気づかれないようにため息をつくと王の元まで向かった。