強引上司は虎視眈々と彼女を狙ってる【7/12番外編追加】
「一華⁉︎」
「一華ちゃん…!」

2人が弾かれたように私の方を見る。
まさか話を聞かれていたとは思ってもみなかったんだろう。

驚いている2人に考える隙を与えず、私は置いていたバッグを引っ掴んでその場から駆け出していた。

「一華っ!」

部長の声がしたけど、振り返らなかった。
そのまま店を出て、全速力で走る。

走って、走って、走って。

視界が滲んで前が見えなくなってようやく足を止めた。

部長が本気の恋はもういいや、そう思うようになったきっかけが翼さんだったとしたら。

例えば別れた理由が昔翼さんにこっぴどくフラれたとか、浮気されたとか、部長の方が翼さんに気持ちを残したままで別れたんだとしたら。

部長は無理だと断っていたけれど、きちんと話し合ったら2人はヨリを戻してしまうかもしれない…

私なんてたったの1ヶ月部長と一緒にいただけで。
翼さんと部長の過ごした日々にはきっと遠く及ばない。

私、翼さんに敵う気がしないよ…

あぁ、こんなことになるなら、部長のこと、藤吾さんってちゃんと呼べば良かった…

もう2度と呼べないかもしれないのに…

「…三好?」

その場から動けずにいたら、突然声を掛けられてハッとなる。

慌てて涙を拭って振り返ると、そこには向井がいた。

「…向井…」

「こんなところで何して…って、泣いてんの?」
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