強引上司は虎視眈々と彼女を狙ってる【7/12番外編追加】
私の顔を覗き込んで驚く向井。

「…なっ、何でもないっ。向井こそこんな時間にどうしたのっ?」

「…俺は小野とさっきまで飲んでて。…なぁ、ほんとどうしたの?」

何でもない、大丈夫。

そう言おうとしたのに、その色素の薄い茶色い瞳で心配そうに見つめられて何も言えなくなった。

涙が溢れないように、俯いて下唇を噛み締める。

「…なぁ、まだ時間ある?近くに落ち着いて飲めるバーがあるんだけど、俺まだ飲み足りないからちょっと付き合ってくれない?」

向井は優しい。こんな状態の私がほっとけなくて、こうやって誘ってくれている。

こくん、頷くと、こっち、と私の手を引いて歩き出す。

2、3分歩いてたどり着いたのは、向井の言った通り落ち着いた雰囲気のお洒落なバーだった。

空いていた3人掛けの丸テーブル席に座って向井はジントニックを、私はモスコミュールを頼んだ。

ちょっとメールだけ打たせて、と断って向井はスマホを弄る。

ブーブーブー。

バッグの中でスマホが鳴っている。
チラリと見ると部長からの着信だったけど、またそのままバッグに戻した。

「…出なくていいの?」

スマホからチラリと顔を上げて問う向井に、いいの、と答えて運ばれて来たモスコミュールをぐびっと飲んだ。
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