君がくれた花言葉
枯れたリィンカーネーション
いつものように優月のお見舞いに行くと、優月は呼吸器をつけていた。その時ちょうど松岡さんが病室に入ってきたので尋ねてみた。

「あの、松岡さん、これ。」

「…?あぁ。優月ちゃんね、昨日の夜発作起こしちゃって。今はねてるけどもうすぐ目を覚ますと思うわ。」

「そうですか。」

「…あのね、下村くん。とても言いづらいんだけど…。」

今まで見たことのない哀しそうな寂しそうなそんな顔をして松岡さんは言ってきた。

「優月ちゃん、もうそんなに長くないの。」

「…え?」

「ごめんね…下村くん。大事な事だからはっきり言うわ。優月ちゃん、今のところ余命3日なの。もうすぐなの。」

僕は松岡さんの言ってることが理解出来なかった。何を言ってるんだ?この人は。まだ息してるじゃないか。呼吸器をつけていたとしても、まだ生きてるじゃないか。もうすぐ死ぬようにはとてもじゃないが見えなかった。
でも泣きながら話す松岡さんを見てあぁ嘘じゃないんだな。これが現実なんだなと思った。
僕は受け入れられない現実を持って涙すら出ないまま病室を後にした。去り際に見たリィンカーネーションの花は枯れていた。

その日の夜。僕はどうやって家まで帰ったかも覚えていなくて魂を引っこ抜かれたかのようにただいますら言わないで帰ってきたと母さんから言われた。

その日はよく眠れなかった。ただ色々考えてるうちに、現実を受け入れて、今できることをしなくちゃいけないと思った。優月がこの世を去るまでいつも通りお見舞いに行き、いつも通り過ごすことを決めた。
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