東京血風録4 ダークサイド・イリュージョン
真琴には、もう一つの才能があった。
それは、他人の霊力や胆力を見極める才能である。
鳳竜堂家の倅の霊力は…。
なんという事だろう、微々たるものではないか。
行おうとしている除霊に如何程の霊力を使うかは測り得ない。しかしながら、護符を使い除霊する、その手法にしては霊力が不足してるのではないか…という不安は拭えなかった。
緊張した面持ちで、護符を手にした柊一はそれを1枚日本人形の額へ貼った。
!!!!!
事もあろうか、人形が奇声を上げた。
人ならざる声。
皆が耳を塞ごうとする中、柊一へ近づく者アリ。
真琴である。
柊一はもう1枚護符を用意していた、が奇声の音波か、手が震えて前に出せないでいた。
柊一の背中へ、真琴が両手を添えた。
真琴は何か小さく呟いた。言霊発動。
柊一は、その内に湧き出る力を感じていた。
「大丈夫、焦らないで」
その真琴の言葉に、柊一は後押しされた。
新たな護符は光輝いて見えた。ゆっくり、先の護符の上へ重ねて貼る。柊一の人差し指と中指とで、護符を押さえる。そして、祓い給え、と唱えた。
奇声は弱まり、人形はカタカタと小さく震えたかと思えば、コトっと倒れてそのまま動かなくなった。
柊一が、初めて除霊に成功した瞬間である。
真琴は柊一の背中で泣いていた。柊一はゆっくり振り向くと、ありがとうと告げた。
真琴の涙は、大粒となり溢れた。
真琴の愛が成した、除霊劇であった。
< 56 / 66 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop