東京血風録4 ダークサイド・イリュージョン
摂津秋房が動く。
手負の鬼の王が。
「復活の狼煙だ」
摂津の上半身がひと回り大きくなった。
特に肩回りが。隆起する。
「お前がか!」
斜骸丸も向き直る。
新しく生まれた者と復活を遂げた者。
どちらに分があるものか。

「友人の使命だ、ここから出す訳にはいかない。来い」
「目まぐるしいなァ。なんでお前とやらにゃいかんのだ」
黒ずくめが凄む。
「邪な力を好きにはさせない」
柊一である。
「この力、お前に負けるとは思えんのだがな!」
黒ずくめが右のトラースキックを放つ。
遥は左へ躱す。のだが、正確無比にして縦横無尽、黒ずくめの脚はそこから更に弧を描いて蹴り込んできた。
それを、スウェイで躱す遥。
お前。
お前と呼ばれた発音に、更に既視感を感じていた。
ま、さ、か。

遥のあるまじき感情の感覚に伊號丸も気がついていた。
なんという迷いと疑心じゃ。

【伊號丸、力を貸して】
【うむうむぅぅぅぅむ】

【王道流奥義“乱”】
心にだけ告げて、動く。
遥の動きに剣鬼伊號丸が力を貸す。気力として。加速する。
王道流奥義“乱”とは。
遥が編み出した遥だけの技。突きの連打であるが、伊號丸の力を借りて加速、そして念を込めて打撃時威力も増す。

最初の5連撃を事もあろうか、手刀にて払い除けた。
次の6連の最後の1撃が左肩を貫いた。「ぐぬ」
更に加速。喉元を貫く一閃。
バキッ!
まさか、木刀の側面を左ハイキックで叩き蹴った。
「何ィッ!?」
【うぐゥ、なんと】
遥の身体が大きく揺らぐ。
黒ずくめはハイキックの勢いそのままに半回転、右脚で蹴ってきた。
揺らぎながらダッキングで躱す遥。
ずざざ。踏み止まった時、木刀の切先は地面スレスレにあった。
黒ずくめは空中に滞空。
この姿勢。
遥は木刀を握り直す。刃先を上へ。
王道流奥義・上昇鬼龍改。
上段からの二段袈裟斬りを改良した一撃必殺剣である。
下から上へ竜巻が如く噴き登る。
上空の男と交錯する。
防御の腕は伸ばしていたが、それらをすり抜け龍は駆け上った。
そして切り裂いたモノ。
伊號丸の気力により増幅された切先は風を纏っていた。
黒のマスクを切り裂いて宙へと飛ばしていた。
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