√セッテン
「言っておくけど、私、潤のことは絶対諦めないから」

「わ、私だって、潤のこと、好きだから……」

「好きならちゃんと勝負しなさいよ、譲ってあげます、みたいな態度は気にくわないのっ」

敦子が立ち上がる。

「おい、おい、山岡は一応入院してるんだから……ここ病院だぞ」

「潤、うるさい。口挟まないでくれる?」

思い切り飛び火だ。

事を落ち着かせようとしたのに、余計火がついたようだ。

「潤に言うのは間違えてるよ、私からすれば、敦子は十分すぎるくらい、潤の特別だよ!」

山岡が言って手を握りしめる。

「じゃー、諦めてくれるんだー」

「やだ!」

「柱の影から潤を見てるよーな人に、私は負けないから。潤は私のだから!」

「潤はモノじゃないよ!」


会話にどんどんと棘が生えてくる。

ああいったら、こう言う。


やがて2人の応酬は、摩擦力0で、重力に従って急降下した。


敦子の手が山岡の左頬を叩く。

山岡は涙を溜めて、下唇をかみしめた。


「何するのよっ」


山岡が敦子の頬を叩く。

「痛っ、何よ超元気じゃん、さっさと退院しちゃいなさいよ! ばか!」


また敦子が山岡に食ってかかる。

山岡もそれに対抗して敦子を押し返した。



………………俺は呆然として椅子に座ってその抗争を見ていた。


敦子も山岡も、髪はぐしゃぐしゃ、涙目だった。
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