LOVEDANGER~元ヤン御曹司と悪女OLの身籠り溺愛婚~
「けど、まだ決めてないなら、ナツキなんてどう?」

ケイさんは冗談口調だから、本気ではないのだろうけど。


それを聞いた篤さんは、心底嫌そうに顔が歪んでいる。


確か、ナツキはケイさんの憧れの人の名前で、自分のお店にもその名前を付けている。


この篤さんのリアクションを見る感じ、ケイさんのお店と同じ名前なのが嫌って言うより、そのナツキって人と同じ名前なのが嫌なのだろう。


「お前、最近本当にあのイケメンホストに似て来たよな?
立ち姿や雰囲気とか似てて、たまにゾッとすんだよ」

そう言う篤さんに。


「俺は村上君からの話しか、そのホストのナツキさんは知らないけど。
凄い人だったんでしょ?」

そう言う斗希さんは、そのナツキさんを知らないんだ。


そして、ナツキさんはホストなんだな。


「うん。本当に凄くて!
ホスト界で伝説にもなっているナツキさんの、あのクリスマスの夜の事は、昨日の事のように思い出せるし。
そして、ある日突然、ナツキさんは幻のようにこの世界から消えて」


「もう、その話辞めろ。
マジ、お前のアイツの話うぜぇ」


ケイさんに、篤さんはけっこう本気でキレている。


「あの、そのナツキさんって、今は何してるんですか?」


そう訊いた私に、ケイさんは、あ、梢ちゃんは知らないんだ、と小さく呟いた。


「今、村上が言ってただろ?
幻みたいに消えたんだろ」


そう篤さんは笑っていて。


その笑い方は、嫌な感じではなくて。


きっと、篤さんはそのナツキさんが今何をしているのか、知っているんだと思った。

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