薄氷
時間薬。そんな言葉があるという。
いずれは忘れられる、遠くなると思っていたのに。
駅に向かう途中に二叉路がある。
三角形の突端にあたる細い土地は、区の管理なのか、ベンチが置かれ公園というほどでもないちょっとした休憩スペースのようになっている。
フェンスに囲まれ、その内側には何本か低木が植えられている。
その脇を通り過ぎるとき、陽澄はいつも一本の木の根元に目をやってしまう。
植えられた場所が悪かったのだろう。根の一部がフェンスに当たっているのだ。
盛り上がった根は、金属製のフェンスが食い込むままにそれでも成長し、フェンスを包むように完全に一体化してしまっている。
規模こそ違うけれど、写真で見たことがあるカンボジアの奥地の遺跡を連想させる。
石組みの遺跡に、熱帯の巨大な樹木が根を張り食い込んでいるのだ。侵食しているのか、はたまた崩れつつある遺跡を支えているのか、識者でも判別がつかないという。
確かなのは遺跡と樹木はもはや融合しており、分離することはできないということだ。
細胞にまで食い込んでしまった存在を、引き剥がすことなどできはしない———
自分には時間薬は効かないと、月日が経つほどに思い知らされる。
いずれは忘れられる、遠くなると思っていたのに。
駅に向かう途中に二叉路がある。
三角形の突端にあたる細い土地は、区の管理なのか、ベンチが置かれ公園というほどでもないちょっとした休憩スペースのようになっている。
フェンスに囲まれ、その内側には何本か低木が植えられている。
その脇を通り過ぎるとき、陽澄はいつも一本の木の根元に目をやってしまう。
植えられた場所が悪かったのだろう。根の一部がフェンスに当たっているのだ。
盛り上がった根は、金属製のフェンスが食い込むままにそれでも成長し、フェンスを包むように完全に一体化してしまっている。
規模こそ違うけれど、写真で見たことがあるカンボジアの奥地の遺跡を連想させる。
石組みの遺跡に、熱帯の巨大な樹木が根を張り食い込んでいるのだ。侵食しているのか、はたまた崩れつつある遺跡を支えているのか、識者でも判別がつかないという。
確かなのは遺跡と樹木はもはや融合しており、分離することはできないということだ。
細胞にまで食い込んでしまった存在を、引き剥がすことなどできはしない———
自分には時間薬は効かないと、月日が経つほどに思い知らされる。