信じてもらえないかもしれませんが… あなたを愛しています
突然、彩夏に5歳の夏が蘇ってきた。
暑い夏。緑の牧場。麦わら帽子をかぶり、
虫かごを持つ少年は白いシャツと短パン姿だった。
「あの頃…あなたに会っていた?」
「覚えてないか…。」
「金子さん…俊一さんは何となく覚えているけど…
あなたもこの牧場にいたの?」
「ああ… 君の手を握った記憶がある。中2の夏だった。」
「そうなの…。」
「君は、ここに来たばかりだったかな。」
「ごめんなさい…あの頃の記憶は曖昧なの。」
彩夏はふいに懐かしくなり、ぬいぐるみを取ろうとして
ベッドサイドに手を伸ばした
それより早く、樹がぬいぐるみを手に取っていた。
「はい。」
「あ、ありがとう。」
受け取ろうとしたら、樹の手に彩夏が手を重ねる形になってしまった。
「あ…。」
ピクッと彩夏の身体が反応した。
思いがけず触れてしまった樹の手の大きさに驚いたのか
その温もりにときめいたのか分からない。
触れてはいけないものに触れてしまった…悪戯が見つかった子どものような反応だ。
思わず、顔を伏せてしまった。樹を直視できない。
その様子を見た樹は、いきなり彩夏の腰に腕を回すと強く抱きしめた。
そして、そのまま彼女をベッドに押し倒した。
衝動だった。何も考えてはいない。ただ、抱きしめたかった。
「何するの…」
二人の体重でベッドが軋んだ。柔らかな布団の上に重なって倒れ込んだ。
抗議しようとしたが言葉より先に彩夏の唇は、覆われてしまった。
苦しくて、息を吸い込もうとしたらキスがより深くなってきた。
無我夢中で振り払おうとしたが、樹はキスを止めない。
次第に羞恥心や怒りより、快感が彩夏を支配した。
18歳の時に婚姻届けを出したが、大学では旧姓を名乗ったままだった。
まさか結婚しているとは誰も思わなかっただろう。
明るくてスタイルもいい彩夏はそれなりに人気があった。
何度か交際を申し込まれたが、いくら樹が女遊びしているからといって、
彼女はそんな気にはなれなかった。
ゼミの先輩に酔って無理やりされたキスの記憶はあるが、
あの気持ち悪さとは比べられない程、樹は彩夏を夢中にさせた。
彩夏の知らなかった大人のキスを樹は大胆に仕掛けてきた。