信じてもらえないかもしれませんが… あなたを愛しています
 
 25日は、長谷川家のペットの定期健診だった。
札幌市の郊外にある綾音の住む広い庭のある邸宅を訪問すると、
綾音とペットの犬や猫たちが賑やかに出迎えてくれた。
彩夏は一匹ずつ丁寧に診察して異常がないか確認していった。
この所の不調を忘れるくらい、仕事とはいえ癒される時間だ。

「はい、みんな大丈夫でしたよ。元気です。
 まだ暑い日もありますから、脱水症状には気をつけて下さいね。」
「ありがとう、彩夏ちゃん。さ、手を洗ったらお茶にしましょ。」

「ありがとうございます。」

長谷川家の広いリビングでお茶を飲みながら、綾音とお喋りを楽しんだ。

「彩夏ちゃん、前に言ったでしょ、
 うちの息子のお嫁さんにならないかな~って。」 

「そうでしたっけ?」
「今日、遅い夏休みで家にいるのよ。会ってみない?」
「まさか、ご冗談ですよね。」

「いやだ、冗談だと思ったの?私、本気よ。」
「ええっ。そうだったんですか?」
「もう、彩夏ちゃんたら…酷いわ。
 あら、体調悪いんじゃない?目の下、クマさんよ。」

「あ…チョッと睡眠不足で…。」
「ダメよ、そろそろ三十路でしょ、睡眠不足はお肌の大敵。
 あ、それなら美容に良いコラーゲン飲んでいきなさい。」
「あ、綾音さん、もう充分頂きましたから…。」

綾音はささっと立ち上がるとキッチンの方へ向かった。
何匹か、猫も後に続いている。

その時、いきなり大音量でテレビがついた。
長谷川家のリビングにある100インチの大型テレビだ。

彩夏が驚いて画面を見ると、樹のアップがそこに映った。

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