豆腐と私の50日
EP.9
「春斗が先に話せば、もれなく三人補修いきだ。」
――昼休み――
「沙紀が補修受けるのって初じゃない?」
「まぁ、付き合って受けたことは何度かあるけど、先生に言われて受けるのは初だね。」
内心ちょっと嫌だった。
できない子って思われそうで。
春斗は心を削ってくるように、追い打ちをかける。
「沙紀。どんまい…。一緒に受けてあげるからさ…だって…。」
肩に手を置き、口角を上げれるだけ上げ嫌に緩慢な話し方で言う。
「まぁ仲良く三人で受けようよ。沙紀がいればすぐ終わるだろうし。大助かりよ!!」
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そんな優しい言葉をかけられ、補修の時間を迎えた。
――道瀬 渉――
数学教科の担当であり、私たちのクラス担任でもある。
社交的な性格で生徒からの信頼も熱い言葉も多い。
学校一のモテモテ先生だ。
「よーし、集まってんな。やるか。」
「補修って言っても何やんの?」
春斗が問う。
「なにしようかと思ったんだけど、波辺に教師になってもらうことにした。」
「え、みっちーどういうこと?」
私は目を点にして、固まった。
「いや、浜辺はさ学力に関してかなり上位だから大学進学ってなった時、東大を狙える位置にいるんだよ。だから人に教えることで知識を根付かせてほしいって思ってさ。」
突然の進路にさらに固まった。
「え!東大!?そんなレベルなの!?」
二人はまたシンクロして言う。
「まぁ、進路を決めるのは俺でも、浜辺の親でもなく、浜辺自身だから強くは言えないけど、ゆくゆくは真剣に向き合わなきゃいけないことだから。どうだ?」
別に東大がとか。先生として二人に教えることで固まったわけじゃない。
一緒に過ごしてきた春斗と離れることになるのかなってことだけが、私の言葉を引き止めていた。
心臓が妙に静かに収まる感じ。
前にも似たことがあった。
―――――そう、あの日。