豆腐と私の50日
EP.10
ひたすらに寒い冬。
窓からの冷気を完全に遮断することができるという北海道の番組を見て羨ましく思った中学一年生の冬。
「さむい。ありえない。さむい。ママ寒い。」
「そんな寒い寒い言ったって寒いことは変わらないのよ。」
「二人で六回寒いって言ったから、寒さ六倍だね。」
「何を言ってんのよ。半分は沙紀が言ったんでしょ。」
え、そこなの?突っ込みどこそこなの?
ママは変わっていた。変人だった。
だから私が変人だったとしても、全く不思議なことではないのだ。
「寒いから寝るね。あー寒さで凍死でもしたらどうしよっ。」
ママはすごくにやにやしている。
「あんた。これで寒さ十倍よ。いや、十一倍になったわよ。」
不敵な笑み。
しっかり数えていたことをベッドの中で笑った。
笑ったせいで、目が冴えた。
結局、眠りについたのは深夜二時を回ってからのことだ。
翌朝。
「沙紀ーー。起きなさい。早くしないとまた遅刻するよ!先生に怒られるの沙紀だけじゃないんだからねー。」
「………………んんん。」
この日は、春斗の声が一切しないことに違和感を感じて、目が覚めた。
階段を下り、玄関を確認したのち、リビングへ足を滑らす。
「ねぇ。春斗は?」
起き抜けの弱弱しい声色で言う。
「まだ、来てないのよ。まぁ、春斗君だって寝坊することぐらいあるのよ。シャキッとしてあんたが春斗君迎えに行ってあげれば?」
そうしようかな。
ママの意見に賛同する。
「にしても、寒いね。」
ママはまた不敵な笑みを浮かべる。
「十二倍ね。」
ママは紛れもなく変態である。