豆腐と私の50日
EP.11
女子とは思えない驚異的なスピードで支度を済ませる。
中学校に上がり楽になったことは、制服。
毎日服装を気にする必要がないことは、大人への一歩だと思う。
「いやー、会社員がスーツで仕事する意味がわかるわー。」
「あんた勝手に頭で処理してるつもりかもしれないけど、傍からみたら変よ。」
ママにだけは言われたくないのである。
「ママの娘なんで致し方ないことかと。」
「変わった子ねー。」
首を横に大きく振りキッチンへと進むママ。
その姿は「首振り牛」をまるで思わせる。
ママがあれだもん。私は仕方ない。
また、自分に助け舟を出した。
「ご飯早く食べな。そして行きな。春斗君の元へ。」
決まったと言わんばかりの面を私に向ける。
さすがにもう、無視する。
ご飯を食べ進め、静寂に包みこまれたママへ視線を向ける。
「ははっ………あはははっ」
笑い転げるしかなかった。
時間にしておよそ三分。
決まったと言わんばかりの面を崩すことなく、私へ向けている。
「もう…わかったからいいって!」
「沙紀が反応しないからじゃん。あー顔引きつりそうだわ。しわ延びまくったんじゃない?若返るわー。」
私はまた無視をして、家を後にした。
帰宅して、まだあの顔をしていたらその時は、番組の「私の母親が変なんです。」に投稿しようと心に決めた。
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春斗の家は十字路を右に進み、また十字路を左に進み、そのまた十字路を左に進むと顔を出す。
簡潔に言えば、最初の十字路を直進すればいいだけの話だ。
だから私は、最初の十字路を右に進んだ。