豆腐と私の50日

 EP.12

 どうして右に進むの?という問いかけが来れば、私は迷うことなく「その行動に意味は無い」と答えよう。



 はっきりと自分の意思を明確にしている。
 かどうかはわからない。
 でも、芯は確かに持っている。



 通常よりも迂回を重ねた。
 元気よく挨拶を交わしてくれる近所の人と触れ合いながら。

 「なんかあっちに救急車止まってたわ。行ってみる?」
 「いや、いいよ。失礼だよ。」

 大人びた発想と、なりきれない発想の声が聞こえた。

 気にせず、前へ進む。

 十字路を左へ、そして、また左へ。

 「――急に倒れたらしいよ。玄関出てすぐだって。」
 「えぇ。まだお子さん中学生でしょ?可哀想に。」

 また聞こえた、大人へなりきれない発想。
 不確かな真実に踊らされる。

 足元を見て歩いていた私は、息苦しくなり、ふと顔を上げる。
 
 春斗の家が見えるはずの直線は、サイレンに呼び寄せられた人々でその姿を隠していた。

 「ちょっとすいません。すいません。通してください。」

 間を上手くすり抜け、人々の最前列に立った。





 赤い血。
 倒れた人を取り囲む水色の隊員。
 一台の救急車。




 そして、その姿を泣き叫びながら見つめる女性。
 私と目を合わせる春斗。


 私たちの朝は、水色の隊員と塀に遮られて迎えた。

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